平成24年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題1解説
アニマシー/有生性とは、そのものが生きていると感じられる度合いのこと。人間や動物などのアニマシーが高い存在は「いる/いない」、低い存在には「ある/ない」で表される。
問1 アニマシーが関係する誤用例
1 「後で私のところに来てください。」⇒「後で私に来てください。」
2 「やっとフタが開いた。」が「やっとフタが開けた。」になるのは、自他の混同による誤りです。
3 「電話が鳴っています。」⇒「電話が鳴いています。」
「鳴く/鳴いて」は生き物に対して使いますが、ここでは電話に対して使っています。アニマシーが関係する誤用といえます。
4 「子供を戦争で亡くした。」が「子供を戦争で死なれた。」になるのは、適切な動詞を使わないことによる誤用です。
したがって答えは3です。
問2 日本語と中国語の特徴
孤立語とは、語形変化しない言語のことです。中国語、ベトナム語、ラオス語、タイ語、クメール語などがこれに該当します。
膠着語とは、語幹に接辞を接続することによって語形変化する語のことです。トルコ語、ウイグル語、ウズベク語、モンゴル語、日本語、朝鮮語(韓国語)、フィンランド語、人工言語のエスペラントなどがこれに該当します。
したがって答えは2です。
問3 人間を表す普通名詞
①人間を表す代名詞は単数と複数が必ず区別される。
人間を表す代名詞とは、私、君、彼、彼女、あの人などのことです。これらを複数形にする場合は「たち」や「ら」をつけます。複数の対象を指して「あなた」ということは許されず、必ず「あなたたち」「彼ら」「彼女たち」としなければいけません。その逆もしかりです。このようにして単数と複数は必ず区別されます。
②人間を表す普通名詞は、単数と複数の区別は原則として義務的ではない。
人間を表す普通名詞とは、学生、親などのことです。これらを複数形にする場合は①と同様、「たち」や「ら」をつけます。しかし、「私の親は厳しい」というとき、この「親」が母親なのか父親なのか、あるいはその両方なのかははっきりしません。「学生」の場合も同じです。このように、人間を表す普通名詞では、単数と複数を区別する必要がありません。
1 「親」は人間を表す普通名詞です。
単数と複数の区別は義務的ではありませんので、指されているのは一人とは限りません。
2 「彼女」は人間を表す代名詞です。
単数と複数は必ず区別されるので、指されているのは必ず一人です。
3 「彼ら」は人間を表す代名詞です。
単数と複数は必ず区別されるので、指されているのは必ず複数です。男性だけでなく女性も含まれているかどうかは、単数と複数の問題ではありません。
4 「学生」は人間を表す普通名詞です。
単数と複数の区別は義務的ではありませんので、指されているのは一人とは限りません。
したがって答えは2です。
問4 英語におけるアニマシーの原則の例外
アニマシーが高いものほど数を区別するという傾向について、英語は例外となります。
1 人間を表す名詞「student」には複数形「students」があり、動物を表す名詞「dog」には複数形「dogs」があります。
2 人間を表す一人称「I」には複数形「we」がありますが、二人称「you」の複数形は同じく「you」です。また、三人称「he」や「she」の複数形は「they」があります。
3 「flowers」というように、植物にも複数形があります。
4 選択肢2で述べたように、二人称「you」の複数形は同じく「you」です。二人称の代名詞には複数形がありませんので、単数形と複数形を区別していません。
したがって答えは4です。