平成24年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題4解説

問1 オーディオ・リンガル法

 オーディオ・リンガル・メソッド (Audio-Lingal Method)とは、戦後1940年代から1960年代にかけて爆発的に流行した教授法。目標言語の音声を特に重視し、教師が中心となってミムメム練習やパターンプラクティス、ミニマルペア練習などを用いて学習し、それらを無意識に自動的に反射的に使えるようになることを目標とする。フォーカスオンフォームズ(言語形式を重視)の教授法。行動主義心理学を理論的背景とする。オーラル・アプローチ (Oral Approach)とも呼ばれる。

 1 ジグソー練習
 ペアやグループになり、各自受け取った情報の異なる文章や絵などからお互いのインフォメーションギャップを話し合いによって埋めていく練習方法。

 2 拡張練習
 教師が提示するキューに従って、言葉を繋げて拡張していく練習方法のこと。オーディオ・リンガル・メソッドのパターン・プラクティス (pattern practice)の一つ。

 3 ミムメム練習/模倣記憶練習 (mimicry and memorization practice)
 教師が口頭で示した文型や語彙を正しい発音で模倣、反復し、記憶する練習法。オーディオ・リンガル・メソッドで用いられる練習の一つ。

 4 ミニマルペア練習
 亀/kame/と駄目/dame/のように、ある1つの音素の違いによって意味の変わるミニマルペアを使い、その音の違いに集中させる発音練習のこと。オーディオ・リンガル・メソッドで用いられる練習の一つ。
 
 したがって答えは1です。

 

問2 コミュニカティブ・アプローチ

 コミュニカティブ・アプローチ (Communicative Approaches)とは、それまでのダイレクトメソッドやオーディオリンガル・メソッドなどの非現実的な教授法を否定し、言語教育は現実的な場面を想定した会話の中で行われるべきという考え方から生まれた教授法。オーディオリンガル・メソッドとは異なり、母語話者並みの発音やスピードを求めず、正確さよりもコミュニケーション能力の育成を中心とする。概念・機能シラバスを用いた現実のコミュニケーションと同じような活動を教室で行い、その活動を通して文法や単語を身につけていくことを目標とする。また、インフォメーションギャップ(情報格差)、チョイス(選択権)、フィードバック(反応)の3つの要素がコミュニケーションの本質であるという考え方に基づき、これらの要素を盛り込んだ活動を行うのが特徴的。フォーカス・オン・ミーニング(言語の意味重視)の教授法。

 したがって答えは3です。

 

問3 文法訳読法

 文法訳読法 (Grammar Translation Method)とは、学習者は教師が説明した文法規則を暗記し、文を母語に訳すことで理解していく教授法。授業では媒介語が用いられる。

 選択肢1
 正しいです。

 選択肢2
 文法用語を用いて分析的に解読するのは文法訳読法の特徴ですが、誰でも一定の効果を上げることができるとは限りません。
 ウィトキンらが提唱した認知スタイル(Cognitive Style)の分類法の1つである「場依存型-場独立型」は、学習者の学習スタイルに影響を及ぼします。場依存型は、何かを行う際に視覚的な場に依存するタイプのことで、文法訳読法は向いていません。場独立型は、視覚的な場に依存しないタイプのことで、自分で足りない部分を補うことができることから、文法訳読法が向いています。

 選択肢3
 正しいです。

 選択肢4
 正しいです。

 したがって答えは2です。

 

問4 サジェストペディア

 1 沈黙期
 第二言語習得の初期段階に見られる現象で、決まった言葉以外はほとんど話さない時期のこと。

 2 コンサート・セッション
 サジェストペディアの授業の一部分のこと。サジェストペディア (Suggestopedia)とは、ロザノフ (Lozanov)が開発した外国語教授法。学習者の不安や緊張などを取り除くために、教室はリラックスできるような環境作りに徹し、絵画や観葉植物が置かれ、光などにも配慮する。クラシック音楽を流しながら、さながらコンサートのような教室活動を行うのが特徴的。授業は、イントロダクション(プレセッション)、コンサートセッション、ポストセッション(パッシブ・コンサート)の3部からなる。

 3 臨界期
 臨界期仮説で唱えられた、それ以降は母語話者のような言語能力を習得するのは難しいとされる年齢のこと。
 臨界期仮説とは、レネバーグ (Lenneberg)によって提唱された母語習得に関する理論で、言語習得には臨界期が存在し、ある年齢を過ぎると母語話者のような言語能力を習得するのは難しいとする仮説。この臨界期は思春期の12歳~13歳頃とされている。

 4 ブレーン・ストーミング (brainstorming)
 参加者の意見を批判したりせずに自由にアイディアを出し合い、その中で新しくより良いアイディアを生み出していく会議手法の一つ。ブレストと略されることもある。

したがって答えは2です。

 

問5 コミュニティ・ランゲージ・ラーニング/CLL (Community Language Learning)

 1 ナチュラル・アプローチ (The Natural Approach)
 1980年代に注目された成人のための外国語教授法で、幼児の母語習得過程を参考にした聴解優先の教授法。クラッシェンのモニターモデルの仮説に基づき、学習者が自然に話し出すまでは発話を強制せず、誤りがあっても不安を抱かせないために直接訂正しないなどの特徴がある。発話が行われるまでの間は聴解練習のみ行われる。

 2 全身反応教授法/TPR (Total Physical Response)
 アッシャー (Acher)により提唱された教授法で、母語習得過程を応用して発話よりもまず聴解力を養成し、教師の指示に対して体を動かしながら言葉を口にする活動を行う。言葉と動作を同時に取り入れることで記憶に残りやすくなると考える。子供の英会話教室などで用いられることが多い。1960年代~1980年代に広まった。

 3 コミュニティ・ランゲージ・ラーニング/CLL (Community Language Learning)
 カラン (Curran)が提唱した、カウンセリング理論を外国語学習に応用して開発した教授法。カウンセリング理論は学習者が誤りを犯すことへの心理的な不安を和らげるために用いられる。また、不安軽減のため、媒介語の積極的な使用を認めている。カウンセリング・ラーニングとも呼ぶ。

 4 サイレント・ウェイ (Silent Way)
 「真の習得はアウェアネス(気づき)なしには起こらない」という立場から、教師はできるだけ沈黙し、学習者自らが規則や体系を発見して学んでいくことを支援する教授法。ロッド、サウンド・カラー・チャート(色付きチャート)などの独自の道具を用いる。

 したがって答えは3です。

 







平成24年度, 日本語教育能力検定試験 解説