平成27年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題10解説

問1 明示的知識と暗示的知識

 明示的知識とは、説明されたり教科書を読んだりして獲得した、規則性などをはっきり言語化して分析的に説明できる知識のことです。授業から得られるような知識は明示的知識です。

 暗示的知識とは、言葉で明確に説明ができない、無意識に現れる感覚的な知識のことです。母語のように説明されなくても自然に獲得できるため、一般に知識として認識されることはありません。

明示的指導
演繹的指導
文法や文型の規則を明示的に説明して教える指導法。
明示的学習
演繹的学習
学習者が文法や文型の規則を演繹的に学習し、自分の中に取り込む学習法。
暗示的指導
帰納的指導
学習者に文法や文型の使用例を示し、学習者自らが例の中から規則を見つけ出させる指導法。
暗示的学習
帰納的学習
学習者が文法や文型の使用例に触れることで、学習者自らが規則を見つけ出し、身に付ける学習法。

  
 1 説明を受けて獲得した知識が必ずしも正確であるとは限りません。
 2 母語話者は、明示的知識も暗示的知識も持っています。
 3 正しいです。
 4 演繹的に学習される知識は、明示的知識です。

 したがって答えは3です。

 

問2 直接引用と間接引用の形式

 直接引用とは、他者の発言や文章を「 」を使って忠実に引用するものです。
 (例)先生は「授業中は静かにしなさい。」と怒りました。

 間接引用とは、他者の発言や文章を変形させて、「 」を使わずに文に埋め込み引用するものです。
 (例)先生は授業中は静かにするようにと怒りました。

 
 選択肢1
 直接引用では元発話を忠実に再現しますので、敬語表現もそのまま引用します。
  (1) 案内役「こちらもあわせてご覧ください。」
  (2) 「こちらもあわせてご覧ください。」と案内役の人にパンフレットを手渡された。

 選択肢2
 直接引用では元発話を忠実に再現します。命令の引用標識として「ように」が使われるのは間接引用です。
  (3) 宣誓「授業中は静かにしなさい!」
  (4) 先生は授業中は静かにするようにと怒りました。

 選択肢3
 間接引用では、文体が普通体に変わって引用されます。
  (5) 「募金お願いします。」
  (6) 道端に、貯金箱を持って募金してほしいとお願いしている人がいる。

 選択肢4
 ダイクシス(直示)とは、発話現場にいなければ意味が成立しない性質のことを言います。間接引用では、元発話のダイクシス表現もそのまま使います。
  (7) 先生「これやったの誰ですか?」
  (8) 先生はこれをやったのは誰かと聞いている。

 
 したがって答えは3です。

 

問3 自然習得環境にいる学習者の産出例

 助詞「が」が省略されたり、「と」が「って」に変わったり、「って」で終わる言いさし表現が多いです。簡略化した言語形式を使っているといえます。

 したがって答えは3です。

 

問4 自然習得環境の利点

 意味論とは、語や文の意味を解明しようとする分野です。美しい、可愛い、綺麗などの類似表現の違いを明らかにしたりします。意味論では文脈から切り離された文字通りの意味を扱います。
 一方、語用論では特定の状況下や文脈での発話における解釈を扱います。「寒いです」という発話が、状況によっては「暖房つけて」のような意味を持つことがあり、そのような解釈の研究を行います。

 自然習得環境では様々な状況に接することができる分、語用論的側面の習得に有利です。
 したがって答えは2です。

 

問5 自然習得環境の良い点を取り入れる

 1 誤りを訂正し、正確なインプットを与えても、自然習得環境に近付けることは難しいです。
 2 自然習得環境で得られるようなインプットを与えなければ、自然習得環境の良い点を取り入れることは難しいです。
 3 フォリナートークを多用した環境は、自然習得環境とは言えません。
 4 正しいです。

 したがって答えは4です。