「ピンクい」は新しい外来語形容詞として定着するか

2019年2月16日日本語コラム

 テレビのあるインタビューで、「ピンクい」という言葉を使っていた女性を見ました。ピンクは赤と白を混ぜてできる、ちょうど桜の花のような色を表す外来語名詞です。これに「い」をつけて形容詞化しているのが「ピンクい」なんですが… こんな言葉初めて耳にしました。

 

 

「ピンクい」は他の色と比べて特別

 調べたところ、「ピンクい」は沖縄や名古屋で使われている言い方のようです。少なくとも私の出身地青森では生まれてこのかた、一度も聞いたことがありません。地域によって使われている方言のようなものなのかもしれません。

 「色を表す外来語+い」で形容詞が作れるなら、じゃあ他の色もできるんじゃないの?って考えてしまうのですが、そうもいかないみたい。

 

色を表す外来語 色を表す外来語+い
レッド レッドい 「赤い」でいい
オレンジ オレンジい 語感が悪い
イエロー イエローい 長音が邪魔だし、「黄色い」でいい
グリーン グリーンい 長音と撥音が邪魔
ブルー ブルーい 長音が邪魔だし、「青い」でいい
パープル パープルい 何とも言えない
ホワイト ホワイトい 「白い」でいい
グレー グレーい 長音が邪魔
ブラック ブラックい 「黒い」でいい

 
 「オレンジい」みたいに、「い」の直前の音の母音が「i」のときものすごく言いにくくなっちゃいます。直前に長音や撥音が来るものも同様ですから、もし一般的に使われるようになるなら省略されるのではないかなと思います。というか、そもそも赤い、黄色い、青い、白い、黒いが既にありますので、色で外来語形容詞を作る必要はこれ以上なさそう。

 だから、これらに当てはまらない「ピンクい」は特別なことが分かります。

 

意外と少ない「外来語形容詞」

 ここからは余談ですが、日本語の中にはたくさんの外来語があります。

 フランス語の「サボタージュ(sabotage)」を略した「サボ」に接尾辞「る」を付加して作られた「サボる」や、ドイツ語の「アルバイト(Arbeit)」に「する」を付加した「アルバイトする/バイトする」などは外来語名詞を動詞化したものです。
 他にも、「カラフル」「セクシー」「デリケート」「パーフェクト」「スムーズ」などの名詞に「な」を付加することで、形容動詞としての使い方もできます。

 外来語名詞が動詞化、形容動詞化される例は挙げればきりがないくらいで、今現在日本語の中にかなり浸透しています。

 
 ところが、意外にも外来語名詞に「い」を付加して形容詞化されたものはかなり少ないです。

外来語名詞 外来語形容詞 意味
エロ
(erotic)
エロい 性的魅力がある様子
グロ
(grotesque)
グロい 残虐的な、残酷な、不気味な
エモ
(emotional)
エモい 感情が動かされた状態を意味する。
ラグ
(lag)
ラグい オンラインゲームで処理に遅延が発生していること。「重い」とほぼ同義。
ピンク
(pink)
ピンクい 沖縄や名古屋で使われている表現。「ピンク色の」と同義。
ナウ
(now)
ナウい 「今風の」という意味。今では死語。

 「ピンクい」はまだまだ日本中に浸透していませんし、「ラグい」は主にネットで用いられている語、「ナウい」は既に死語でもう使われていません。

 近年使われ出した「エモい」を含めると、“生きている”外来語形容詞は「エロい」「グロい」「エモい」の3つということになります。それほど外来語形容詞は定着しにくいみたいですね。

 

「ピンクい」は定着する?

 「ピンクい」は語感も悪くないですし、「ブルー:青い」のように対応する元々の形容詞がないことから、もしかしたらこれから次第に使われ出すかもしれません。否定形「ピンクくない」はやや言いにくいのが気になりますが、「しにくい」「しにくくない」が既にありますので、定着には大きな問題はないように思います。

 色の言い方も現在進行で変化しているみたいなので、個人的にはこれからの「ピンクい」の動向に注目です。

2019年2月16日日本語コラム