平成26年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題6解説

問1 演繹的指導

明示的指導
演繹的指導
演繹的アプローチ
文法や文型の規則を明示的に説明して教える指導法。
明示的学習
演繹的学習
学習者が文法や文型の規則を演繹的に学習し、自分の中に取り込む学習法。
暗示的指導
帰納的指導
帰納的アプローチ
学習者に文法や文型の使用例を示し、学習者自らが例の中から規則を見つけ出させる指導法。
暗示的学習
帰納的学習
学習者が文法や文型の使用例に触れることで、学習者自らが規則を見つけ出し、身に付ける学習法。

 
 1 ナチュラル・アプローチ (The Natural Approach)
 1980年代に注目された成人のための外国語教授法で、幼児の母語習得過程を参考にした聴解優先の教授法。クラッシェンのモニターモデルの仮説に基づき、学習者が自然に話し出すまでは発話を強制せず、誤りがあっても不安を抱かせないために直接訂正しないなどの特徴がある。発話が行われるまでの間は聴解練習のみ行われる。

 2 全身反応教授法/TPR (Total Physical Response)
 アッシャー (Acher)により提唱された教授法で、母語習得過程を応用して発話よりもまず聴解力を養成し、教師の指示に対して体を動かしながら言葉を口にする活動を行う。言葉と動作を同時に取り入れることで記憶に残りやすくなると考える。子供の英会話教室などで用いられることが多い。1960年代~1980年代に広まった。

 3 オーラル・メソッド (Oral Method)
 ハロルド・パーマー (H.E.Palmer)によって提唱された教授法。ナチュラル・メソッドと同じく幼児の母語習得過程を外国語学習に適用しつつ、必要があれば媒介語を使ってもいいとし、それまでのダイレクト・メソッドを改良して開発された。オーラル・メソッドに基づく授業は、Presentation(文型の提示)、Practice(基本練習)、Production(応用練習)から構成される。これはオーラル・メソッドの独自の手法で、PPPと呼ばれる。

 4 文法訳読法 (Grammar Translation Method)
 まず教師が文法を説明し、学習者は文法規則を身に付けた上で文を母語に訳すことによって理解していく教授法です。授業中は媒介語を用います。明示的指導/演繹的指導です。

 したがって答えは4です。

 

問2 初期段階における留意点

 選択肢1
 例えば初級で勉強する「~ている」は、動作の継続、習慣的な動作、状態の持続など様々な意味があります。初級の段階でこれらを網羅的に導入すると覚えられず、かえって混乱させてしまいます。教えるものを絞るべきです。

 選択肢2
 初級に教えるべき文型であるかどうか(難易度が適切か)、そしてその文型が実際の言語生活においてもよく使われているかどうか(実用的かどうか)には気を配るべきです。

 選択肢3
 ある文型の例文を考える際は、できるだけ一般的な場面かつ一般的な表現であるほうがいいです。学習者がその例文をそのまま日常生活で使えるくらいであれば覚えやすくなります。そのためには文脈も重要です。

 選択肢4
 作った例文に初級で扱うべきではない文型や単語が含まれている場合は当然不適当です。また、学習者の興味などの合わせて例文を考えると授業は盛り上がりやすく、また覚えやすくもなります。

 したがって答えは1です。

 

問3 形・意味のルール

 1 この文型に動詞を入れるなら動ます形だけ許されます。
 2 「散歩」や「水泳」などの名詞でも問題ありません。
 3 この文型の「に」は、動作の目的を表しています。
 4 助詞「へ」は、動作の方向を表します。

 したがって答えは2です。

 

問4 「Vべきだ」の使い方のルール

 「~べき」の用法については以下を参照してください。
 【N3文法】~べき/べきだ/べきではない
 【N3文法】~べきだった/べきではなかった

 1 正しいです。
 2 「べき」は社会常識や道徳的なものによる判断を述べるときに使います。
 3 正しいです。
 4 「べきだった」は後悔の気持ちを表しますので、正しいです。

 したがって答えは2です。

 

問5 タスク中心言語教育

 教授法は、大きく3つの言語習得観で分けられます。

 フォーカス・オン・フォームズ (FonFs:Focus on Forms)
 文法に焦点を当てた教授法のこと。教室において、教師が中心となり、文法規則等を最初から手取り足取り正確に教え込む方法をとる。機械的なドリル練習などを多用するが、文法的な正確さを重視しているため、かえって流暢さが身につかないとされている。オーディオリンガル・メソッドや文法訳読法などが代表的。

 フォーカス・オン・ミーニング(FonM:Focus on Meaning)
 意味に焦点を当てた教授法のこと。学習者が中心となって多く聴き、多く読むのが特徴的だが、この時、教師による介入が完全に行われない。意味を重視することによってコミュニカティブに言語習得できるが、流暢さを身につけることはできても、文法的な正確さが身につかないとされている。ナチュラル・アプローチやイマージョン教育などが代表的。

 フォーカス・オン・フォーム(FonF:Focus on Form)
 FonFsの流暢さが身につけられない欠点と、FonMの文法的な正確さが身につけられない欠点を互いに補うために考案された教授法のこと。コミュニケーションの中で文法的な知識を学習していこうという考え方に基づき、教室においてはFonMと同様に学習者が中心となるが、必要があれば教師は介入する。何らかのトピックやテーマを用いることで、文法そのものに焦点を置かずに意味中心とするが、教師によるプロンプトやリキャストでフィードバックを行うことにより、その中で学習者の注意が文法形式に向くような工夫がある。FonFsのように文法説明を始めたり、機械的なドリル練習をすることはなく、最終的には学習者の気付きによって文法知識の習得を促す。

 文章中の下線部Eとは、フォーカス・オン・フォーム(FonF)のことです。

 1 タスク中心の教授法 (TBLT)/タスク中心言語教育
 1990年代以降に提唱された、オーディオ・リンガル・メソッドとコミュニカティブ・アプローチのお互いの長所を組み合わせ、欠点を補い合った教授法。FonFに基づく。現実的な場面を想定したタスクの中で実際に使われる言葉を使うことによって自然なコミュニケーション能力を身につけさせるもの。フォーカス・オン・フォームの教授法です。

 2 スキルシラバス/技能シラバス
 言語の四技能(読/書/話/聞)の中から、学習者に必要な技能に焦点を当てて構成されたシラバス。

 3 概念・機能シラバス
 機能シラバスと実際のコミュニケーションの場面を組み合わせて構成されたシラバス。依頼する、慰める、同意する、拒否する、提案するなどの言語の持つ機能を用い、実際にコミュニケーションが行われる場面で目標を達成するような活動を進めていく。

 4 認知記号学習理論
 コグニティブ・アプローチ/認知学習法の基盤となった理論です。
 コグニティブ・アプローチ/認知学習法とは、認知記号学習理論(認知学習理論)を基盤とし、生成文法理論と認知心理学に影響を受けた教授法。演繹的な教育法をとり、人間の認知能力を利用して言語規則を理解させ、その上で言語習得のための練習する。

 したがって答えは1です。





平成26年度, 日本語教育能力検定試験 解説