平成27年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題4解説

問1 オーラル・メソッド

 1 フォネティック・メソッド (Phonetic Method)
 国際音声字母(IPA)の初版が制定されたことを受けて開発された教授法。発音記号を使った発音練習をし、音と意味を直接的に連結させることが特徴的。音声学の知見を基盤とする。

 2 サイコロジカル・メソッド (Psychological Method)
 19世紀後半にグアン (Gouin)によって提唱されたナチュラル・メソッドの教授法の一つで、幼児の母語習得過程を外国語学習に適用し、幼児が思考した順に言葉を使うことに着目した教授法のこと。シリーズ・メソッド、グアン・メソッド、グアン式教授法、とも呼ばれる。この教授法は山口喜一郎が植民地時代の台湾で導入された。

 3 オーラル・メソッド (Oral Method)
 ハロルド・パーマー (H.E.Palmer)によって提唱された教授法。ナチュラル・メソッドと同じく幼児の母語習得過程を外国語学習に適用しつつ、必要があれば媒介語を使ってもいいとし、それまでのダイレクト・メソッドを改良して開発された。オーラル・メソッドに基づく授業は、Presentation(文型の提示)、Practice(基本練習)、Production(応用練習)から構成される。これはオーラル・メソッドの独自の手法で、PPPと呼ばれる。
 
 4 ナチュラル・メソッド (Natural Method)
 媒介語を使用しない教授法。幼児の母語習得過程を外国語学習に適用し、より自然な方法で外国語を身につける方が良いという考え方を持つ。「サイコロジカル・メソッド」と「ベルリッツ・メソッド」がある。

 
 したがって答えは3です。

 

問2 全身反応教授法/TPR (Tota Physical Response)

 1 SAPL (Self-Access Pair Learning)
 ペアやグループで学習するコミュニケーション重視の学習法。

 2 全身反応教授法/TPR (Tota Physical Response)
 アッシャー (Acher)により提唱された教授法で、母語習得過程を応用して発話よりもまず聴解力を養成し、教師の指示に対して体を動かしながら言葉を口にする活動を行う。言葉と動作を同時に取り入れることで記憶に残りやすくなると考える。子供の英会話教室などで用いられることが多い。1960年代~1980年代に広まった。

 3 CLL (Community Language Learning)
 カラン (Curran)が提唱した、カウンセリング理論を外国語学習に応用して開発した教授法。カウンセリング理論は学習者が誤りを犯すことへの心理的な不安を和らげるために用いられる。また、不安軽減のため、媒介語の積極的な使用を認めている。カウンセリング・ラーニングとも呼ぶ。

 4 VT法 (Verbo-Tonal Method)
 言語聴覚論に基づいた教授法。リズムやイントネーションを重視し、身体リズム運動を活用するのが特徴。

 
 したがって答えは2です。

 

問3 サジェストペディア

 サジェストペディア (Suggestopedia)とは、ロザノフ (Lozanov)が開発した外国語教授法。学習者の不安や緊張などを取り除くために、教室はリラックスできるような環境作りに徹し、絵画や観葉植物が置かれ、光などにも配慮する。クラシック音楽を流しながら、さながらコンサートのような教室活動を行うのが特徴的。授業は、イントロダクション(プレセッション)、コンサートセッション、ポストセッション(パッシブ・コンサート)の3部からなる。

 問題文の「緊張や不安を取り除き」という部分がサジェストペディアの考え方に一致します。
 したがって答えは1です。

 

問4 オーディオ・リンガル・メソッド

 オーディオ・リンガル・メソッド (Audio-Lingal Method)とは、戦後1940年代から1960年代にかけて爆発的に流行した教授法。目標言語の音声を特に重視し、教師が中心となってミムメム練習やパターンプラクティス、ミニマルペア練習などを用いて学習し、それらを無意識に自動的に反射的に使えるようになることを目標とする。フォーカスオンフォームズ(言語形式を重視)の教授法。行動主義心理学を理論的背景とする。オーラル・アプローチ (Oral Approach)とも呼ばれる。

 1 教師の指示に学習者が瞬間的に答える形式で発音矯正が行われます。
 2 オーディオ・リンガル・メソッドでは特に話すことを重視しています。
 3 ミムメム練習やパターン・プラクティスは教師の指示(刺激)と学習者の反応によって行われます。
 4 オーディオ・リンガル・メソッドでは話すことを重視しています。

 したがって答えは2です。

 

問5 コミュニカティブ・アプローチ

 コミュニカティブ・アプローチ (Communicative Approaches)とは、それまでのダイレクトメソッドやオーディオリンガル・メソッドなどの非現実的な教授法を否定し、言語教育は現実的な場面を想定した会話の中で行われるべきという考え方から生まれた教授法。オーディオリンガル・メソッドとは異なり、母語話者並みの発音やスピードを求めず、正確さよりもコミュニケーション能力の育成を中心とする。概念・機能シラバスを用いた現実のコミュニケーションと同じような活動を教室で行い、その活動を通して文法や単語を身につけていくことを目標とする。また、インフォメーションギャップ(情報格差)、チョイス(選択権)、フィードバック(反応)の3つの要素がコミュニケーションの本質であるという考え方に基づき、これらの要素を盛り込んだ活動を行うのが特徴的。フォーカス・オン・ミーニング(言語の意味重視)の教授法。

構造シラバス 言語の構造や文型に焦点を当てて構成されたシラバス。オーディオリンガルアプローチやサイレントウェイで用いられる。
機能シラバス 依頼する、慰める、同意する、拒否する、提案するなどの言語の持つ機能に焦点を当てて構成されたシラバス。
場面シラバス 「レストランで注文する」や「スーパーで買い物をする」などの使用場面に焦点を当てて構成されたシラバス。
トピックシラバス
話題シラバス
ニーズ分析などを踏まえ、学習者の興味がある内容や実社会で話題になっている話題を中心に構成されたシラバス。
スキルシラバス
技能シラバス
言語の四技能(読/書/話/聞)の中から、学習者に必要な技能に焦点を当てて構成されたシラバス。
タスクシラバス
課題シラバス
言語を使って何らかの目的を遂行することに焦点を当てて構成されたシラバス。ロールプレイなどがこれにあたる。
概念・機能シラバス 機能シラバスと実際のコミュニケーションの場面を組み合わせて構成されたシラバス。依頼する、慰める、同意する、拒否する、提案するなどの言語の持つ機能を用い、実際にコミュニケーションが行われる場面で目標を達成するような活動を進めていく。

 1 場面シラバス
 2 タスクシラバス(課題シラバス)
 3 機能シラバス
 4 話題シラバス(トピックシラバス)

 したがって答えは3です。





平成27年度, 日本語教育能力検定試験 解説