平成29年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題8解説

問1 ラポール (rapport)

 ラポール (rapport)とは、2人の人の間にある相互信頼の関係のこと。

 したがって答えは1です。

 

問2 傾聴

 傾聴とは、相手の話に注意を払って丁寧に耳を傾けること。自分が聞きたいことを聞くのではなく、相手が話したいことを真摯に聴き、理解・共感することが中心となる。

 1 話を引き出すのではなく、相手が話したいことを聴くのが傾聴です。
 2 正しいです。
 3 正しいです。
 4 正しいです。

 したがって答えは1です。

 

問3 周辺化

 文化変容モデルとは、ベリー (J.W.Berry)が提唱した、異なった文化を持つ人が別の文化に入った場合、入った人と受け入れる側がどのように対応するかによって起こる心理的変化を表したモデルのこと。入った人を取り巻く社会の在り方や個人レベルの文化変容を、自文化と滞在国の文化が共存する状態である「統合」、自文化を喪失し、滞在国の文化に馴染んでいる状態である「同化」、自文化を喪失し、滞在国の文化に馴染んでいる状態である「分離」、自文化を喪失し、滞在国の文化にも馴染めずにいる状態である「周辺化」の四つに分類した。それぞれの文化受容態度は固定的なものではなく常に変化するものとされ、そのうち「統合」は最も望ましいタイプとされている。

 選択肢1
 「自分かと留学先の文化に関心を持ち」が、自文化の保持と周辺との関係が良いことを表しています。上の表の左上「統合」にあたります。

 選択肢2
 自文化を喪失しつつも、周囲との関係が良い「同化」にあたります。

 選択肢3
 自文化を喪失し、周囲との関係も悪い「周辺化(境界化)」にあたります。

 選択肢4
 自文化を保持し、周囲との関係が悪いのは「離脱」にあたります。

 したがって答えは3です。

 

問4 文化相対主義

 文化相対主義/文化相対論とは、特定の文化は他の文化の尺度では測れないとし、文化には多様性があることを認め、それぞれの文化の間に優劣はないとする立場のこと。逆の立場に自文化中心主義がある。ボアズ (Boas)によって提唱された考え方。

 自文化中心主義 (ethnocentrism)とは、自文化が最も優れているという考え方で、自文化を絶対的基準として他文化を推し量ろうとする立場のこと。逆の立場に文化相対主義がある。

 1 自文化中心主義の考え方
 2 自文化中心主義の考え方
 3 文化相対主義の考え方
 4 サピア・ウォーフの仮説に近い考え方

 サピア・ウォーフの仮説/言語相対論とは、サピア (Sapir)とウォーフ (Whorf)によって提唱された、人間の考え方や物事に対する見方はその人の母語の影響を受けているという考え方のこと。「母語が思考・外界認識を決定する」という強い仮説と、「母語が思考・外界認識に影響する」という弱い仮説があり、主張には幅がある。

 したがって答えは3です。

 

問5 高コンテクスト文化

 高コンテクスト文化/高文脈文化とは、実際に言葉として発された内容よりも、言葉にされていないのに相手が理解できる内容のほうが多い話し方をする文化のこと。言葉を発した場所や話し手と聞き手の関係、周囲の状況、それまでの言動などの要素の影響を受けて、言葉の意味内容が変わる。日本語が代表的。

 低コンテクスト文化/低文脈文化とは、言葉として発された内容のみが相手に伝わる話し方をする文化のこと。ドイツ語が代表的。

 選択肢1
 「察し」は高コンテクスト文化の典型的な例です。

 選択肢2
 意味不明で、全く関係ありません。
 
 選択肢3
 共通の価値観や前提の共有が少ないのは低コンテクスト文化の特徴です。そのためはっきりと言葉にしなければ伝わりにくくなります。

 選択肢4
 高コンテクストと低コンテクストに優劣はありません。いずれの場合も正常にコミュニケーションが取れます。

 したがって答えは1です。