2年生後期会話

 第8回目のテーマは「道に人が倒れていたらどうする?」です。

 この質問を聞くと助ける以外に何があるのかと考えたくなるかもしれませんが、中国では必ずしもそうではありません。

 遡ること2006年、南京市のバス停で転んでしまったおばあさんを助けてあげた青年が訴えられてしまった事件。おばあさんは「彼にやられた」と供述していました。彼は無罪を主張するも結局治療費を払うことになりました。これを南京彭宇案と言います。

 他にも親切にも転んだおばあさんを助けた外国人に言いがかりをつけて金をせしめたり、最近では車にひかれた2歳の女の子が通行人に見て見ぬふりをされて、結局再びひかれて死んでしまう事件もありました。

 中国では倒れている人を助けてはいけないという考え方が広く浸透しています。これはその南京彭宇案で裁判所が出した判決が引き起こしたと言ってもいいかもしれません。

 このテーマを選んだ理由はまさにこの社会問題に対してどう思うかと学生に聞いてみたくなったから。
 ちょっと重いテーマですけど、ディスカッションのしがいがある内容ですね。

 とりあえず自由に一人ひとり考えてもらいました。
 5分くらい。

 まずは一人ひとりの意見発表。
 すぐ助けに行くが2名、まず救急車を呼んでから助けに行くが4名、救急車を呼ぶだけが6名。無視する学生はいませんでした。

 今回は意見によってグループを組み、それぞれの意見を主張してもらいます。
 休み時間もかねて考える時間を20分与えました。

 各グループの回答です。

 Aグループ
  ①人間にとって、善を持っていることは一番重要です。
  ②老人は弱いグループです。
  ③もし自分の両親が倒れたら、人々に助けてもらえるほうがいい。
  ④国民は以前のその事件に対して反省しました。
  ⑤知識がありません。電話をした後で医者に教えます。

 このグループは条件付きで助けるというもの。
 救命処置に関する知識がないので助けられない。だからまず救急車を呼ぶ。
 応急処置に失敗して死んでしまったら自分の責任になってしまうのは回避しなければならない。

 Bグループ
  ①事態は一刻を争う
  ②助けられるなら助ける
  ③助けることは幸せなこと
  ④状況によって異なる

 このグループは真っ先に助けにいくことを選びました。
 事態は一刻を争うので迷っている時間はなく、まず自分が近寄って状況を確認。
 重篤だと判断すれば救急車を呼びます。

 Cグループ
  ①人を助けることを教えられていない。
  ②今の現実では老人は信用もない。
  ③自分が冤罪だということを証明する人はいない。
  ④もし冤罪になったら家族にも影響する。

 このグループは助けない事を選びました。とにかく濡れ衣を着せられることを避けたいと言っていました。

 
 ディスカッションでは鋭い質問が飛び交いました。特に助けないCグループに対しての質問です。
 ・電話だけして助けないというが、状態も見ないでなぜ電話だけするのか。
 ・もし自分の家族が倒れたときに通行人が無視したらどう思うか。
 ・あなたが助けなかったことで死んでしまうと責任があるはずだ。
 …

 しかしCグループも切り返しがうまく
 ・助けないことは本当に悪いことか。
 ・良くも悪くも私と関係ないことに自分から行く必要はない。
 ・私たちは助けないとは言っていない。電話はしている。
 …

 こういうやり取りが50分続きました。
 結局ディスカッションが終わらないまま授業が終わってしまい今回も消化不良。かなりの白熱でもっと聞きたかったです。

 数を重ねるごとに時間が伸びてきているので、時間配分を来週以降調整したいと思います。

 以上、第8回目でした。

2年生後期会話

 第7回目のテーマは「水を100元で売る方法」です。

 前回のNASAゲームのような内容を少し意識しました。
 ディベートまではいかない程度の対立構造が見込めそうで、かつ柔軟な発想力も問えるようなテーマです。
 今後は対立構造と定義付けに注意してテーマを考えたいと思います。

 まずはペットボトル1本取り出して説明。
 中国では一般的に500ml1本で1元(約17円)で販売されています。これをどうにかして100元(1700円)で売りたい。

 ここではそれだけ伝えて自由に一人ひとり考えてもらいました。
 5分くらい。

 まずは一人ひとりの意見発表。
  ・神様にお供えした水
  ・病気が治る水
  ・水を100元で買ったら、500元分の商品券上げる
  ・有名人が飲んだ水
  ・容器を水晶で作る
  ・不老不死になる水
  ・綺麗な包装をして競売にかける
  ・金箔入りの水
  ・中身も容器も変わらず砂漠で売る
  ・肌に良い水
  ・インフレ
  ・体が強くなる水

 一通り意見が出たところで整理します。
 犯罪になりそうなものは禁止実現不可能なものは禁止です。
 例えば病気が治るとか、不老不死になるとかは食品表示等の問題に触れますからダメです。

 ここである男の子が「インフレ」と一言言いました。たぶん説明が難しかったのかもしれません。
 推測するに、市場に出回っている水の供給量を減らして価格を上げるとか、あるいはハイパーインフレか何かにして100元にしようってことなのか…。 発想がぶっ飛んでて天才です。

 ここからグループで一つの意見にまとめてもらいます。
 休み時間もかねて考える時間を20分与えました。

 各グループの回答です。

 Aグループ
  容器は純粋な水晶から作られ、コレクションの価値がある。
  この水は中に豊富なミネラル、ビタミン、たんぱく質、炭水化物がある。
  この水を買った後は無限の杯を入れることができます。
  世界限定1000本です。買いたい人は早くしなければいけません。

  容器は水晶で、中身はもう水ではありません。3行目の意味は「1本買ったら2本目からは無料で提供」という意味。限定商品にすることは消費者を惹き付ける一つのマーケティング手法ですね。
  考え得る装飾をし尽くした水になっています。ちなみに1000本限定は嘘だそうです。

 Bグループ
  まず良い包装があります。そしてチャリティーのために競売をし、その次にこの水は希望を象徴することを強調します。
  水を売る金は公益を作ります。もうそれから人々の虚栄心と偽善心を利用します。
  最後に一人で会場で人々の競売を誘います。

  このグループはAグループとは違い水自体に何かするわけではなく、水をブランド化しようとしています。
  手始めにチャリティーという名目で競売にかけ、飲む目的以外の価値を付加。利益はボランティアや募金などに使うことで多くの人の購入を促します。
  ある程度のところまで行くと人々は虚栄心や偽善心が生まれてくるので、そうなればこの水は黙っても売れるようになるだろうという考え方。
  なかなか老獪です。

 Cグループ
  有名なデザイナーが作った限定のもの。金持ちへの売り物。
  普通の水ではなく、自然の水から集めたもの。

  富裕層にターゲットを絞っているのは悪くないかも。

 Dグループ
  世界一の高い山から取った水。伝説によると神様がこの水をよく飲んでいるそう。
  水は甘くて高い栄養価がある。非常に珍しい。少ないほど高価になる。
  世界にこの一本だけ。

 
 このようなテーマであれば質問が多く飛び交うようになりました。
 世界一高い山から取ってくるためのコストは高いから採算が取れないのではないかという質問に対しては、とにかく100元で売ればいいのだから利益は考える必要がないなど。

 この辺りは私の定義付けが不足していた部分ではありますが、ちゃんとしたディスカッションができていたように思います。

 次同じ授業を行うときはちゃんと定義を決めておくことにします。
 1.犯罪になりえるものは禁止
 2.実現可能なこと
 3.利益をあげること

 以上、第7回目でした。

2年生後期会話

 第6回目はちょっと趣向を変えてNASAゲームというのをしてみました。

 参考にしたサイトはこちらの2つです。
 ・グループワークで使えるNASAゲームのやり方
 ・コンセンサスゲーム宇宙(NASA)の回答

 簡単に説明するとこんな感じ。

 数人乗せた宇宙船が月面に不時着し機体は破損。母船から320km地点に降り立ちました。
 宇宙飛行士たちに残されたのは破損を免れた15のアイテムで、これらを使って母船へと辿り着くことが目的です。
 まずは皆で話し合い、このアイテムを優先度・重要度の高い順に順位をつけましょう。
 (15のアイテムは上記URL参照)

 これの面白いところはNASAの模範解答が用意されている点で、自分の答えと比較することができます。
 点数は自分の答えとNASAの答えの優先度の差をアイテムごとに求め、全て足し合わせます。
 したがって点数が高ければ高いほど模範解答から離れていきます。
 0~25点は最優秀、26~32点は優秀、33~45点は良、46~55点は可、56点~70点は不可。

 これはコンセンサスゲームとも呼ばれているようで、その名の通りグループのコンセンサス(合意)が得られるまで十分話し合って決めます。
 ちょうどディスカッション的要素も盛り込めるので今回試験的に採用してみました。

 まずは10分くらい個人で考えてみて、その後はグループで20分話し合いました。
 このグループでの20分は恐ろしいくらい意見がぶつかっていました。これが本当に月面だったらみんな死んでるかもしれないというくらいの白熱ぶりです。

 そしてグループ発表。
 黒板に1から15までの順位を書いてもらって、その理由について述べてもらいます。
 上位の物がなぜ必要か、下位の物はなぜ不必要かが重要ですね。

 各グループの回答。数字が小さいほど優先度が高いことを意味します。
 書くの面倒なので名称は全部略して書いてます。

 

 発表もちゃんと話し合った結果の理由を教えてくれました。
 特に「〇〇さんによれば~だそうです。」みたいな発表もあり、話し合った末誰かが妥協した様子も垣間見えます。

 ディスカッションはで45分近くに及びました。
 もっと忌憚の無い議論をしようと思えばあと20分くらいあってもよかった気がしますね。

 最後に答え合わせです。
 答えは上記のURLを参照してください。

 結果
 一つのグループが22点という恐ろしい得点を叩き出して最優秀でした。
 ちょっとこれには唖然です。理由も完璧でしたし、宇宙行っても大丈夫かもしれませんね!

 
 この授業は結構盛り上がりました。
 こんなテーマだと学生もやりやすいんだなぁ… 過去の私のテーマと比べるとやっぱり天と地の差です。

 来週はNASAテーマの方向に寄せたものを考えます!
 以上、第6回目でした。