日本語コラム

 テレビのあるインタビューで、「ピンクい」という言葉を使っていた女性を見ました。ピンクは赤と白を混ぜてできる、ちょうど桜の花のような色を表す外来語名詞です。これに「い」をつけて形容詞化しているのが「ピンクい」なんですが… こんな言葉初めて耳にしました。

 

 

「ピンクい」は他の色と比べて特別

 調べたところ、「ピンクい」は沖縄や名古屋で使われている言い方のようです。少なくとも私の出身地青森では生まれてこのかた、一度も聞いたことがありません。地域によって使われている方言のようなものなのかもしれません。

 「色を表す外来語+い」で形容詞が作れるなら、じゃあ他の色もできるんじゃないの?って考えてしまうのですが、そうもいかないみたい。

 

色を表す外来語 色を表す外来語+い
レッド レッドい 「赤い」でいい
オレンジ オレンジい 語感が悪い
イエロー イエローい 長音が邪魔だし、「黄色い」でいい
グリーン グリーンい 長音と撥音が邪魔
ブルー ブルーい 長音が邪魔だし、「青い」でいい
パープル パープルい 何とも言えない
ホワイト ホワイトい 「白い」でいい
グレー グレーい 長音が邪魔
ブラック ブラックい 「黒い」でいい

 
 「オレンジい」みたいに、「い」の直前の音の母音が「i」のときものすごく言いにくくなっちゃいます。直前に長音や撥音が来るものも同様ですから、もし一般的に使われるようになるなら省略されるのではないかなと思います。というか、そもそも赤い、黄色い、青い、白い、黒いが既にありますので、色で外来語形容詞を作る必要はこれ以上なさそう。

 だから、これらに当てはまらない「ピンクい」は特別なことが分かります。

 

意外と少ない「外来語形容詞」

 ここからは余談ですが、日本語の中にはたくさんの外来語があります。

 フランス語の「サボタージュ(sabotage)」を略した「サボ」に接尾辞「る」を付加して作られた「サボる」や、ドイツ語の「アルバイト(Arbeit)」に「する」を付加した「アルバイトする/バイトする」などは外来語名詞を動詞化したものです。
 他にも、「カラフル」「セクシー」「デリケート」「パーフェクト」「スムーズ」などの名詞に「な」を付加することで、形容動詞としての使い方もできます。

 外来語名詞が動詞化、形容動詞化される例は挙げればきりがないくらいで、今現在日本語の中にかなり浸透しています。

 
 ところが、意外にも外来語名詞に「い」を付加して形容詞化されたものはかなり少ないです。

外来語名詞 外来語形容詞 意味
エロ
(erotic)
エロい 性的魅力がある様子
グロ
(grotesque)
グロい 残虐的な、残酷な、不気味な
エモ
(emotional)
エモい 感情が動かされた状態を意味する。
ラグ
(lag)
ラグい オンラインゲームで処理に遅延が発生していること。「重い」とほぼ同義。
ピンク
(pink)
ピンクい 沖縄や名古屋で使われている表現。「ピンク色の」と同義。
ナウ
(now)
ナウい 「今風の」という意味。今では死語。

 「ピンクい」はまだまだ日本中に浸透していませんし、「ラグい」は主にネットで用いられている語、「ナウい」は既に死語でもう使われていません。

 近年使われ出した「エモい」を含めると、“生きている”外来語形容詞は「エロい」「グロい」「エモい」の3つということになります。それほど外来語形容詞は定着しにくいみたいですね。

 

「ピンクい」は定着する?

 「ピンクい」は語感も悪くないですし、「ブルー:青い」のように対応する元々の形容詞がないことから、もしかしたらこれから次第に使われ出すかもしれません。否定形「ピンクくない」はやや言いにくいのが気になりますが、「しにくい」「しにくくない」が既にありますので、定着には大きな問題はないように思います。

 色の言い方も現在進行で変化しているみたいなので、個人的にはこれからの「ピンクい」の動向に注目です。

日本語コラム

 先日知り合いの先生からこのような質問が来ました。

漫画に「る゛」があると生徒に聞かれましたが、これはどのように説明すればいいですか?

 本来ラ行に濁点は付きません。当然教科書には存在しない文字なのですが、この漫画では使われています。日本語学習者から見ると「なんじゃこりゃ」と思ってもおかしくありません。

 さて… 学生にどう説明しましょうか。答えは簡単です。

 日本語の発音に「る˝」は存在しませんが、「る」を強く言う場面で便宜上このように表記することが極稀にあります。漫画の登場人物が泣きながら話しているところを見ると、演出の一種だと思われます。

 重要なことは、「る」も「る゛」も発音としては変わりません。作者さんの意図で、ただ強調したいのだと思われます。

 「る」以外に見かける可能性が高いのは「あ゛」でしょう。大きい声で叫ぶときにこのように表記することがあります。いずれにしても強調ですね。

 「だくてん」で変換すると「゛」になります。スマホやパソコンでは、「あ+だくてん」で2文字分使って入力するのが一般的です。
 感情表現の一種だと思ってSNSなどで使ってみてはどうでしょうか。

日本語コラム

 学生はアメリカ人の先生を親しみを込めて名前で呼びます。名前がJohnならストレートにJohnと呼ぶわけです。しかし日本人の先生に対して苗字や名前で呼んだら大変失礼です。さんや君などの敬称をつけずに呼ぶことを呼び捨てと言って、これは通常目上から目下に使われる呼び方です。

 毎年新1年生には1人2人くらいそういう人がいます。
 悪意はなく親しみを込めて呼んでくれているのは十分分かりますので特に気分を害することはありませんが、万が一別の先生が聞いていた場合は説教が始まってもおかしくありませんね。

 そしてつい先日、そういう一幕がありました。

1年生 : たかはし~ こんばんは!
わたし : おっ、こんばんは!
3年生 : すごく失礼ですよ!
1年生 : (´・ω・`)…?
3年生 : 先生をそうやって呼ぶのは失礼だから、「先生」と呼びなさい!
1年生 : (人ω<`;)

 3年生と一緒に散歩してた時に偶然その1年生に会い、間髪入れずに叱ってくれました。本当に先輩の鑑です。
 1年生はまだとっさに「ごめんなさい」「すいません」が言えなかったせいで笑ってごまかす感じになりました。あのままずっと居れば気まずくなっていただろうと思いますが、私たちは散歩中でしたのでそそくさと立ち去り、その1年生にとっては良い経験になったかなと思います。

 私はこういうことにあまり注意しません。日本語教師としてダメですかね…
 わざとでなければ悪意もないですし、注意しなくてもいずれ自分の間違いに気付く時があります。私が注意するよりも他人から注意されたほうが強い印象になります。
 今回ばかりは3年生に拍手ですね!