平成29年度, 日本語教育能力検定試験

問1 具体的な情報の授受を必要としないやり取り

 選択肢1
 どこに行くかを言いたくないときに「ちょっとそこまで」と言ったりします。言う方は具体的な情報を隠し、言われた方は察して追求しないことが多いでしょう。

 選択肢2
 直接「ここを掃除して」と言っているので、具体的な情報のやり取りです。

 選択肢3
 「いつもの」は第三者にとっては抽象的ですが、当人は「いつもの」が何であるか分かっています。これは具体的な情報を授受していると言えます。

 選択肢4
 具体的な情報のやり取りです。

 したがって答えは1です。

 

問2 他者との関係性を構築したり維持したりする機能

 ヤコブソンは、言葉には6つの機能があると述べました。

情動的機能 感嘆詞や間投詞などの相手に気持ちを伝えようとする機能。
詞的機能 言語の具体的な内容よりも、言語そのものを使って遊べる機能。俳句、リズム、音の響きなど。
能動的機能 話し手の発話によって相手を動かす機能。命令、依頼、禁止、要請など。
交話的機能 他者との関係性を構築したり意地したりする機能。挨拶、相槌、会話など。
指示的機能 出来事や事象をそのまま描写する機能。「向こうに山が見える」など。
メタ言語的機能 ある言葉が、他の言葉によって説明でき、言い換えられる機能。

 ハイムズはヤコブソンの6つの機能に1つ加えて、7つの機能があると述べました。その一つが状況的機能です。

状況的機能 「では」「これから」など、コミュニケーションの状況を変える機能。

 したがって答えは2です。

 

問3 多義的で複数の発話行為に使用されるもの

 選択肢1
 初めて会う人に対する挨拶に使われます。 

 選択肢2
 お店でお客さんを迎え入れるために使われます。

 選択肢3

意味 例文
とても、大変 どうもありがとう
どうやっても、なぜか どうもよく分からない/どうも最近疲れやすい
ありがとう どうも/その節はどうも
あまり 勉強はできるけど性格はどうも

 他にも用法があるかもしれませんが、ぱっと思い付くだけでこれだけあります。「どうも」は多義的で、複数の場面で使用される言葉です。

 選択肢4
 久しぶりに会った人に対して使います。

 したがって答えは3です。

 

問4 同居の家族には使わない挨拶表現

 「こんにちは」だけは家族に使わない表現です。
 したがって答えは1です。

 

問5 使用場面や用法に変化が見られる挨拶表現

 「お疲れ様です」は社内メールの冒頭で使われる以外にも、退勤する際の挨拶、街で先輩に会った時の挨拶にも使われます。
 一方その他の選択肢は使える場面が限定的です。
 
 したがって答えは4です。

平成29年度, 日本語教育能力検定試験

問1 ジェンダー

 生物学的な男女の違いを性別(sex)、社会的・文化的な男女の違いをジェンダー(gender)と言います。

 文章中ではジェンダーについて述べられているので、答えは社会文化的です。
 したがって答えは1です。

 

問2 感動詞や終助詞にジェンダーが現れる場合

 感動詞は感動や応答、驚き、注意、勧誘、呼びかけなどを表す言葉のことで、感嘆詞とも呼ばれます。
 終助詞は文や句の末尾について疑問・禁止・感動などの意味を付け加えるもののことです。

 選択肢の感動詞と終助詞に着目して、ジェンダーが現れているものを探します。

 1 「ちょっと」も「よ」も中立的です。
 2 「あ」も「の」も中立的です。「あたし」はジェンダーが現れていますが、感動詞でも終助詞でもありません。
 3 「ええと」も「っけ」も中立的です。
 4 「おい」と「ぞ」にジェンダーが現れています。

 したがって答えは4です。

 

問3 女房詞

 女房詞/女房言葉とは、宮中の女官が使い始めた言葉のことで、語頭に「お」をつけたり、語末に「もじ」をつけたりします。現在でも用いられている言葉もあります。

 1 +ひや
 2 +でん
 3 しゃ+もじ
 4 さじ

 したがって答えは4です。

 

問4 てよだわ言葉

 選択肢1
 てよだわ言葉「てよ」は断定表現として使えません。

 選択肢2
 「これ食べてよ」のような言い方なら軽い命令表現ですが、てよだわ言葉ではありません。

 選択肢3
 雑な例文ですが…
 「気分はどうですか?」-「よくってよ(いいですよ)」
 「昨日はどうでしたか?」-「よくってよ(よかったですよ)」
 のような文で、同じく「てよ」を使っていますが時制が違います。確かに時制の区別なく用いることができるようです。

 選択肢4
 てよだわ言葉の「てよ」は上昇調です。
 「これ食べてよ」の「てよ」は下降調です。

 したがって答えは3です。

 

問5 役割語

 選択肢1
 「ざんす」は江戸時代の遊女特有の表現です。現在では金持ち、上品ぶった人を表す役割語として使われています。スネ夫の母が代表的な例です。

 選択肢2
 「あるよ」はステレオタイプな中国人を表現する際に用いられる役割語です。幕末から明治にかけての外国人居留地で自然発生したピジン日本語に由来するとされています。台湾人のみならず、中国人や西洋人も用いていたようです。

 選択肢3
 「じゃ」は老人を表す役割語として用いられています。起源は江戸時代の上方語と考えられています。

 選択肢4
 「たまえ」はそれなりの強制力を持った相手に対する命令表現で、目上から目下へ使う男言葉です。役割語ではありません。
 参考:【N3文法】~たまえ

 したがって答えは3です。

平成29年度, 日本語教育能力検定試験

問1 ら抜き言葉

 ら抜き言葉とは、一段動詞可能形「~られる」の「ら」が省略された言葉のことです。「食べられる」が「食べれる」のようになります。「~られる」には可能形の他に、受身形や尊敬語としての用法があります。これらを差別化するためにら抜き言葉が生じました。ら抜き言葉は日本語の揺れとして規範主義の立場からは誤用とみなされますが、全国的に見ると「ら」を入れるほうが少数派となっています。

  (1) まだ賞味期限切れてないから食べられるよ。(可能)
  (2) 妹にケーキを食べられた。(受身)
  (3) 昨日のケーキ、食べられましたか?(尊敬)

 
 1 切れる
 「切る」は五段動詞なのでら抜きは生じません。

 2 売れる
 「売る」は五段動詞なのでら抜きは生じません。

 3 書けれる
 「書く」は五段動詞なのでら抜きは生じません。また、このような活用はありません。

 4 考えれる
 「考える」は一段動詞で、可能形は「考えられる」です。この「ら」が省略された「考えれる」はら抜き言葉です。

 したがって答えは4です。

 

問2 さ入れ言葉

「さ入れ言葉」とは、五段動詞の使役形「せる」の直前に、不要な「さ」が挿入されている言葉のことです。

  (例)  辞書形 - 使役形 - さ入れ言葉
  (4) (五段)書く - 書かせる - 書かさせる
  (5) (五段)死ぬ - 死なせる - 死なさせる
  (6) (五段)撮る - 撮らせる - 撮らさせる

 
 選択肢1
 一段動詞の「~られる」は可能形の他に、受身形や尊敬語としての用法があります。これらを差別化するためにら抜き言葉が生じました。この選択肢はら抜き言葉の説明です。

 選択肢2
 標準語と方言が混ざったものはネオ方言ですが、この選択肢は方言が混ざり合ったものなので分かりません。

 選択肢3
 一段動詞の謙譲語、例えば「食べさせていただく」の「させていただく」の部分が謙譲語と表す形式として五段動詞にも用いられたことにより、「帰らさせていただく」となった、という意味です。本来五段動詞の謙譲語は「ない形+せていただく」で作りますので、上記の活用だと本来不要な「さ」が入れられていることになります。したがってこれはさ入れ言葉の説明です。

 選択肢4
 一段動詞の可能形「ない形+られる」の形式を五段動詞にも用いてみると、「書かられる」「飲まられる」となってしまいます。これは意味を持たない活用で間違いです。

 したがって答えは3です。

 

問3 言葉の乱れ

 根拠となるものが見つからなかったので解説を省きます。
 選択肢3は個人的に納得できる内容でした。答えは3です。

 

問4 新語・流行語

 新語とは、過去には無かった物事を言い表すために新しく創り出された単語のことです。
 流行語とは、流行した単語や言葉、フレーズのことです。

 選択肢1
 正しいです。近年であれば睡眠負債、聖地巡礼、eスポーツなどが挙げられます。

 選択肢2
 正しいです。災害級の暑さやスーパーボランティアなどのことだと思います。

 選択肢3
 流行語は流行した単語や言葉、フレーズのことで、次の世代に引き継がれるものではありません。

 選択肢4
 正しいです。お笑い芸人さんの一発ギャグなどのことです。

 したがって答えは3です。

 

問5 言葉は時代によって変わる

 この問いは、以下の2つのサイトから出題されているものです。興味深い内容がいろいろと書かれているので一読をお勧めします。
 参考:「言葉のQ&A」(まとめ) | 文化庁
 参考:言葉のQ&A – 文化庁広報誌 ぶんかる

 選択肢1 「世間ずれ」

本来の意味である「世間を渡ってきてずる賢くなっている」と答えた人が過半数でしたが,30代以下の世代では「世の中の考えから外れている」という意味で使っている人の方が多いという結果でした。
 - 文化庁 | 文化庁月報 | 連載 「言葉のQ&A」 「世間ずれ」の意味より引用

 
 選択肢2 「おもむろに」

本来の意味である「ゆっくりと」と答えた人が4割台半ばであったのに対し,本来の意味ではない「不意に」と答えた人が4割強と,僅かな差しかないという結果でした。
 - 「おもむろに」動く様子は急か – 言葉のQ&A – 文化庁広報誌 ぶんかるより引用

 
 選択肢3 「小春日和」

本来の意味とされる「初冬の頃の,穏やかで暖かな天気」と答えた人が5割強であったのに対し,「春先の頃の,穏やかで暖かな天気」と答えた人が4割強でした。また,年代によって理解の仕方に違いが見られます。
 - 「小春日和」はいつ頃の天気か。 – 言葉のQ&A – 文化庁広報誌 ぶんかるより引用

 
 選択肢4 「議論が煮詰まる」

「煮詰まる」とは,本来,議論などが結論を出す段階になることを意味する言葉です。
40代を境に,それより若い世代では「行き詰まって結論が出せない状態」,それより年配の世代では「結論の出る状態」と答えた人の割合が大きくなっています。
 - 文化庁 | 文化庁月報 | 連載 「言葉のQ&A」 議論が「煮詰まる」のは良いことか?

 
 したがって答えは1です。