平成29年度, 日本語教育能力検定試験

 「平成27年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3B解説」でも連濁について出題されています。

連濁とは、複合語で後部要素の語頭子音が濁音化する現象です。後部要素の語頭の無声子音が母音(有声音)に挟まれた時に、隣りの音に同化するために連濁します。

  (1) 手紙 : te + kami → te[k]ami → tegami
  (2) 時々 : toki + toki → toki[t]oki → tokidoki

 濁音化することによってその複合語を一つの語として聞こえやすくする効果があります。連濁は必ず起きるとは限りません。連濁を阻害する要因として、以下の場合が挙げられます。

 日本語における連音現象なので特に和語に起きやすく、漢語や外来語では極めて稀です。ただし、十分に日本語として定着している漢語や外来語は連濁する傾向があります。

 複合語の前部要素と後部要素が意味的に並列関係である場合には連濁は起こりません。

 複合語の後部要素にもとから濁音が含まれている場合、連濁は起こりません。これをライマンの法則と呼びます。例えば「はる+かぜ」のように後部要素に濁音が含まれているときは「はるがぜ」とはならず、「はるかぜ」のままです。ただし、ライマンの法則には「縄梯子」等の例外があります。

 水玉、株式会社、夫婦喧嘩、雨合羽、縄梯子のように例外がいくつか存在するため、連濁が発生する条件について完璧に説明できる法則は見つかっていません。

 

問1 清音と濁音で意味の違いを生じない言葉

 選択肢1
 「一言」と「他人事」は意味が違います。

 選択肢2
 写真などを見ながら過去を想起して「このころは良かった」
 最近のことを指して「このごろ流行りの女の子」
 意味が違います。

 選択肢3
 「そのくらい我慢してよ」と「そのぐらい我慢してよ」は同じ意味です。

 選択肢4
 「確執」「角質」と「確実」は意味が違います。

 したがって答えは3です。

 

問2 歴史的に濁音で始まる語

 野豚は野生の豚を指します。豚は上位語で、野豚は下位語です。それぞれ指すものが違うので、歴史的背景は関係ないのではないでしょうか。

 したがって答えは1です。

 

問3 連濁が発生する条件

 「山川(やまかわ)」のようにお互いが並列関係にあるものは連濁が起こりません。
 したがって答えは3です。

 

問4 連濁が発生する条件②

 連濁は日本語における連音現象なので特に和語に起きやすく、漢語や外来語では極めて稀です。「リゾートホテル」の「ホ」が濁音にならない理由は、外来語だからです。
 したがって答えは2です。

 

問5 連濁が発生する条件③

 複合語の後部要素にもとから濁音が含まれている場合、連濁は起こりません。これをライマンの法則と呼びます。
 「えりまきとかげ」の「と」、「ひとりたび」の「た」が濁音にならない理由はライマンの法則で説明できます。

 したがって答えは3です。

 

平成29年度, 日本語教育能力検定試験

問1 拘束形式

 独立形態素(自由形態素)とは、単独で語になることができる形態素のことです。{amagumo}は{ama}と{gumo}に分けられ、それぞれ「雨」と「雲」という単語になります。
 拘束形態素とは、単独で語になりえない形態素のことです。主に接頭辞や接尾辞などのことです。「お電話」の「お」など。

 自由形式とは、単独で意味を表し、自由に使うことができる語のことです。ある語の最も一般的な読み方のほうは自由形式です。
 拘束形式とは、単独で意味を表すことができず、より大きな形式の一部としてしか現れない語のことです。ある語の一般的ではない読み方のほうは拘束形式です。
 例えば「あめ」は「雨」や「飴」を表し、そのまま自由に使うことができます。しかし「あま」は雨雲、雨傘、雨曇りなど、特定のより大きな形式の一部としてしか現れない形式です。つまり、「雨」のより一般的な読み方「あめ」は自由形式で、「あま」は拘束形式ということです。

金(きん) 独立形態素の自由形式
髪(ぱつ) 独立形態素の拘束形式
酒(さか) 独立形態素の拘束形式
蔵(ぐら) 独立形態素の拘束形式
雛(ひな) 独立形態素の自由形式
祭り(まつり) 独立形態素の自由形式
花(はな) 独立形態素の自由形式
曇り(ぐもり) 独立形態素の拘束形式

 したがって答えは2です。

 

問2 音韻的に異なる要素

 1 {pi}も{bi}も独立形態素で、単独で「日」になることができます。
 2 {ha}は独立形態素で、「歯」や「葉」になることができます。
 3 {ha}は独立形態素で、葉書の「葉」や、助詞の「は」になることができます。
 4 おでんの「お」は拘束形態素で、単独で語になることはできません。一方、「彼を」の「を」は独立形態素で、単独で助詞の「を」になることができます。

 したがって答えは4です。

 

問3 一定の音韻的な環境で交替する例

 1 産毛、すね毛、胸毛、まつげなど、「げ」になる規則性がありません。
 2 「一」の後ろに子音k、s、t、pが来るとき、「いっ」になります。(一回、一切、一体、一杯…)
 3 木霊(こだま)、木陰、木の葉、木漏れ日など、「こ」になる規則性がありません。
 4 「ぎょう」と「こう」を分ける規則性はありません。

 したがって答えは2です。

 

問4 擬音語・擬態語に見られる音韻交替

 擬音語・擬態語には、音韻交替によって「動作が瞬間的であること」と「動作が滑らかでゆっくりであること」が表せるものが少なくないようです。
 「ポロッ:ポロリ」「くるっ:くるり」「ぷすっ:ぷすり」なども音韻交替によって意味の違いが生じています。

 したがって答えは3です。

 

問5 文法的な機能の違いが生まれる音韻交替

 音韻交替によって文法的な違いが出るものを選択肢から探します。

 選択肢1
 他動詞「残す」はヲ格を取ります。「~を残す」
 自動詞「残る」はガ格を取ります。「~が残る」
 音韻交替によって動詞が変わり、取るべき格助詞も変わりました。

 選択肢2
 「彼女はさびしがっている」と「彼女はさみしがっている」は同じ意味です。文法的な違いもありません。

 選択肢3
 音韻交替とは、一つの音素が異なる音で現れることです。「渡す」に音素がいくつも加えられて「渡される」となっているので、そもそも音韻交替ではありません。
 「渡す」と「渡る」であれば、この問題の正解となり得ます。

 選択肢4
 他動詞「とめる」はヲ格を取ります。「~をとめる」
 他動詞「やめる」はヲ格を取ります。「~をやめる」
 音韻交替によって文法的な違いは生まれません。

 したがって答えは1です。

 

平成29年度, 日本語教育能力検定試験

問1 比喩による意味拡張

 意味を拡張する比喩表現は4つに分けられます。

種類 性質 例文
メタファー
(隠喩)
類似するものに喩える。 頭がショートする。
足が棒になる。
メトニミー
(換喩)
隣接関係にあるもので喩える。 隣の部屋がうるさい。
パトカーに捕まった。
シネクドキー
(提喩)
上位概念で下位概念を表す。またはその逆。 お茶でも飲みに行きましょう。
花見に行きましょう。
シミリー
(直喩)
「~のような」「~みたいな」で直接喩える。 バケツを引っくり返したような雨
太陽みたいな人

 「花見に行く」はシネクドキーです。上位語の「花」で下位語の「桜」を示しています。

 1 メトニミー 警察とパトカーの隣接性による比喩。
 2 シネクドキー 上位語「天気」で下位語「晴れ」を示す。
 3 意味拡張されていません。
 4 メタファー 卵と見習いの類似性による比喩。

 したがって答えは2です。

 

問2 意向形

 1 「忘れよう」は意志を表します。
 2 相手に対しての「行こう」は勧誘を表します。
 3 「行くつもりだ」は、その場ではなく、以前から意志を決めていたときに用います。
 4 「私は書く」は、自分の意志を表します。

 したがって答えは3です。

 

問3 様々な解釈ができる発話行為

 1 助言
 2 命令
 3 慣習となっているものを説明しています。提案ではありません。
 4 断定

 したがって答えは3です。

 

問4 ネガティブ・ポライトネス(ネガティブ・フェイス)

 ポライトネス理論とは、会話において両者が心地よくなるよう、あるいは不要な緊張感がないように配慮するなど、人間関係を円滑にしていくための言語活動のことで、人はお互いのフェイスを傷つけないように配慮を行いながらコミュニケーションを行っているとする理論です。ブラウンとレビンソンによって提唱されました。

 フェイスとは、人と人の関わり合いに関する欲求のことです。そのうち共感・理解・好かれたいことを望む欲求をポジティブ・フェイスといい、邪魔されたくない、干渉されたくないという自由を望む欲求をネガティブ・フェイスといいます。フェイスはポライトネス理論の鍵となる概念です。

 この問題のネガティブ・ポライトネスは、ネガティブ・フェイスと同義です。

 1 ポジティブ・フェイス
 2 ポジティブ・フェイス
 3 ポジティブ・フェイス
 4 ネガティブ・フェイス

 1~3は相手と共感して距離を縮めようとしているのに対し、4は相手に配慮して距離を取ろうとする様子が伺えます。
 したがって答えは4です。

 

問5 ポジティブでもネガティブでもないフェイス

 1 子供への配慮も、距離を縮めようともしていません。
 2 子供のネガティブフェイスに配慮した、母親のポジティブフェイスです。
 3 子供のネガティブフェイスに配慮した、母親のポジティブフェイスです。
 4 子供のネガティブフェイスに配慮した、母親のポジティブフェイスです。

 したがって答えは1です。