日本語コラム

 先日一年生からこのような質問をもらいました。

「すみません」「すいません」はどっちも謝罪を表しますよね。
じゃあこのふたつの違いって何ですか?

 日本人には気付きにくい部分。こんな純粋な質問は大好物です。
 というわけでその違いについてまとめてみました。

 

「すみません」と「すいません」の違い

「すみません」と「すいません」の語源

 元々は動詞「済む(すむ)」から来ていて、その否定形「すまない/すまぬ」を丁寧形にすれば「すみません」になります。
 この「済む」と「澄む」の語源は同じです。

 
 「済む」物事の完了や予想していた程度以下や範囲内で収まること、十分足りることを表します。
  (1) 宿題が全て済んだ。(宿題が全て終わった。)
  (2) 軽い怪我で済んだ。
  (3) 図書館から借りれば買わずに済む。

 「澄む」不純なものを含まず混じりけがないことを表します。
  (4) 空気が澄んでいて気持ちが良い。
  (5) 彼女は澄んだ目をしている。
  (6) 池に澄む月にかかれる浮雲は 払ひ残せる水錆なりけり

 
 ここから転じて、相手に対して失礼なことをしてしまい心が澄んでいない、まだ何か心残りがある状態を「すみません」と言うようになりました。今では謝罪や感謝、依頼などを意味を表します。
 相手を呼び止める際に「すみません」というのは、多少の謝罪の気持ちが含まれているからです。

 そしてこの「すみません」の「み」の子音mが脱落して母音だけが残り「すいません」となりました。単に発音しやすくしたためと思われます。
 こういう場合は言いにくいほうが大体最初ですよね。

 

「すいません」は話し言葉

 以上の語源から見ると「すみません」のほうが最初と言えます。なので正しい日本語は「すみません」です。しかし実際の会話ではどちらを使っても問題はありません。
 ただし文章やメッセージなどでは「すみません」を使ったほうがいいですし、ビジネスの場面ではもっと丁寧な表現を使うべきです。

書き言葉 すみません
話し言葉 すみません/すいません
ビジネス 申し訳ございません/申し訳ありません等々…

 

更に崩れた「さーせん」という言い方

 「さーせん」とは、「すいません」をさらに省略して発音したときの言い方です。カタカナで「サーセン」と書かれることもあります。
 かなり砕けた表現ですので謝罪に使うにはあまりにも軽く、場合によっては相手を侮辱するニュアンスを含むこともありますので注意が必要です。当然ながら正式な場では使うことはできません。

 似たような表現は他にもいくつかあります。
  (7) こんにちは ⇒ ちーっす/ちわーっす/ちわー
  (8) ありがとうございます ⇒ あざーす/あざーっす

 ちゃらちゃらした若者やネットで使われることがありますが、現在ではほぼ死語です。

 

まとめ

 「すみません」は書き言葉にも話し言葉にも使えます。
 「すいません」は会話特有の言い方です。
 意味の違いはありません。

日本語コラム

「がきぐげご」について

 日本語の「がぎぐげご」には2種類の発音があります。
 一つはごく一般的に用いられる「がぎぐげご」で、有声軟口蓋破裂音[ɡ]と記述されるものです。もう一つは[ŋ]と記述される軟口蓋鼻音の「がぎぐげご」です。ここでは以降、ガ行鼻濁音と呼ぶことにします。

 ガ行鼻濁音は原則語中・語尾のガ行に現れ、丸くて柔らかい音に聞こえることから、母音の無声化と並び日本語の美しい発音のために大切な要素となっています。

 ただし日本語の標準語ではこの2つに意味の違いはないため、現代ではあまり使われなくなっているようです。
 [ɡ]を「がぎぐげご」、[ŋ]を「か゜き゜く゜け゜こ゜」と区別する場合もあります。

が ぎ ぐ げ ご ( ga・gi・gu・ge・go )
か゜き゜く゜け゜こ゜( ŋa・ŋi・ŋu・ŋe・ŋo )

 

鼻濁音が発生する条件

①語中・語尾は原則鼻音化する

  (1) 新潟県(にいか゜たけん)
  (2) 三月のライオン(さんか゜つのらいおん)
  (3) 鏡(かか゜み)
  (4) 重ね着(かさねぎ゜)
  (5) ジョギング(じょき゜んく゜)

 

②格助詞・接続助詞は必ず鼻音化する

  (6) 私が木村です。
  (7) ここまで来たが、まだ道のりは長い。
  (8) したがって、このような式が成り立つ。
  (9) だがしかし、もう間に合わない。
  (10) 「あなたに話があるの。」

 

③連濁は鼻音化する

 「空」は単体では「そら」と読みますが、前に「青」が接続して複合語を形成すると「あおぞら」と読むようになり、このとき読み方が「ぞら」と変わります。このように、2つ目の言葉の語頭子音が濁音化する現象を「連濁」と言います。
 「k」の子音が濁音化して「g」に変わったときは鼻音化します。

  (11) 株式会社(かぶしきか゜いしゃ)
  (12) 壁紙(かべか゜み)
  (13) 笑い声(わらいこ゜え)
  (14) 歯車(はく゜るま)
  (15) 雨雲(あまく゜も)
  (16) 一人暮らし(ひとりく゜らし)

 

④複合語はしたりしなかったり

 「名詞+名詞」で作られる複合語は、分割した一つひとつで意味が成り立つ場合は基本的に鼻濁音になりません。

  (17) 昼ご飯(ひる+ごはん)
  (18) 高等学校(こうとう+がっこう)
  (19) 衆議院議員(しゅうぎいん+ぎいん)
  (20) 帝国銀行(ていこく+ぎんこう)
  (21) 窓ガラス(窓+ガラス)

 分割した一つひとつで意味が成り立たず、もともとひとつの単語として認められている場合は鼻濁音になります。
 ※一部例外もあります。

  (22) 小学校(しょうか゜っこう)
  (23) 中学校(ちゅうか゜っこう)
  (24) 雨合羽(あまか゜っぱ)
  (25)※飛行機雲(ひこうき+く゜も)

 

⑤数詞の「5」は鼻音化しない

 数詞としての「5」は鼻音化しません。

  (26) 5人(ごにん)
  (27) 5匹の猫(ごひきのねこ)
  (28) 15人(じゅうごにん)
  (29) 25日(にじゅうごにち)

 数詞としてではなく熟語化したもの、もともとの意味合いが薄れたものは鼻濁音で発音されます。

  (30) 大五郎(だいこ゜ろう)
  (31) 十五夜(じゅうこ゜や)
  (32) 七五三(しちこ゜さん)
 

⑥音節の繰り返しは鼻音化しない

 同じ音が連続する擬態語・擬音語は原則鼻音化しません。
 (2文字目に濁音が来る場合はどっちでもいい)

  (33) ガミガミうるさい。
  (34) 油でギトギトの壁
  (35) ぐるぐる目が回る。
  (36) ベッドでゴロゴロする。
  (37) もぐもぐ食べる。(鼻濁音でもいい)

 

⑦外来語の場合

 外来語は原則鼻音化しませんが、日本語として十分定着している場合は鼻音化してもいいです。
 また、「ン」の後にガ行が来る場合は必ず鼻音化します。

  (38) エネルギー(えねるき゜ー)
  (39) イギリス(いき゜りす)
  (40) キログラム(きろぐらむ)
  (41) コンピューターゲーム(こんぴゅーたーげーむ)
  (42) スペードのキング(すぺーどのきんく゜) 

 

まとめ

 通常の濁音と鼻濁音で意味の違いはありませんので、現代では淘汰されてきていると言われています。
 鼻濁音で言わないからといって間違っていませんから、学習の優先度としては低めです。
 ただし日本語の美しい発音のためには必要な要素なので、スピーチなどでは身に付けたいところです。

  ①語中・語尾は原則鼻音化する
  ②格助詞・接続助詞は必ず鼻音化する
  ③連濁は鼻音化する

 この3つに関しては例外が無いと思われますが、それ以外は意外と例外があります。
 書いていて思いましたが、外来語と擬音語・擬声語には例外が多すぎます

 以上です。

日本語コラム

 日本語の動詞は大きく3つのグループ「一段活用」「五段活用」「変格活用(サ変/カ変)」に分けられます。
 グループによって活用の方法が変わるため、このように分類されました。
 日本では中学校の国語で動詞の分類「上一段活用」「下一段活用」「五段活用」などについて学びますが、正直こんなことを知らなくても動詞の活用ができるのがネイティブの強みです。

 しかし日本語学習者にとってはそうはいきません。
 その動詞がどのグループに属するのかが分からなければ動詞の活用もできなくなります。
 初級では五十音図と動詞活用の規則性を頭に叩き込まなければいけませんので、実は日本語は学び始めには大きな山があると言えます。

 では、動詞を見てどうやってグループを判別するか。
 いくつかの方法があるので紹介します。

動詞の簡単なグループ分け(日本語ネイティブ専用)

辞書形を動ない形にしてみる

 辞書形を「動ない形」にしてみるとその動詞が一段活用か五段活用か一目で分かります。
 これは例外が一切ない完璧な法則です!

「ない」の直前の音が「あ段」なら五段活用
「ない」の直前の音が「い段」「え段」なら一段活用

  (1) 話す ⇒ 話ない (五段)
  (2) 切る ⇒ 切ない (五段)
  (3) 死ぬ ⇒ 死ない (五段)
  (4) 居る ⇒ ない (一段)
  (5) 食べる ⇒ 食ない (一段)
  (6) 忘れる ⇒ 忘ない (一段)

 これならいとも簡単に分かりますが、実はこの方法、日本語ネイティブ専用の判別方法。日本語学習者はグループ分けできません。
 なぜなら日本語学習者はそもそも動ない形を知らないからです。
 日本語学習者は、動ない形を使わない動詞の判別方法を身に付けなければいけません。これが少々骨が折れます…。

 

動詞のグループ分け(日本語学習者用)

 そこで編み出されたのが、辞書形からグループ判別する方法。
 かなり複雑を極めます。

動詞の最後の字を見る

動詞辞書形の最後の平仮名が「う」「く」「す」「つ」「ぬ」「む」「る」「ぐ」「ぶ」で終わるものは五段活用。
ただし、「い段の文字+る」または「え段の文字+る」で終わるものは一段活用。

  (7) 結 (五段)
  (8) 勝 (五段)
  (9) 学 (五段)
  (10) 食べる (一段)
  (11) 倒れる (一段)
  (12) 見る (一段)

 しかしながらこの方法は完璧にグループ分けすることはできず、例外があります。
 以下の動詞は上の方法で一段動詞だと判別されてしまいましたが、実は五段動詞です。

切る、斬る、伐る、しめきる、おもいきる、かしきる、かりきる、捻じ切る、値切る、割り切る、区切る、千切る、句切る、裏切る、見切る、貸切る、間切る、仕切る、返る、帰る、還る、ひっくり返る、呆れかえる、寝返る、引っ繰り返る、振り返る、煮えかえる、煮えくり返る、見返る、静まり返る、射る、要る、入る、立ち入る、寝入る、うねる、しくじる、ちびる、のめる、上がる、交じる、参る、喋る、契る、奔る、孵る、弄る、怖じる、愚痴る、抉る、捩る、捻じる、捻る、掻き毟る、握る、攀じる、散る、曲がりくねる、毟る、混じる、減る、湿る、滑る、漲る、火照る、焦る、煎る、照る、煮えたぎる、熱る、猛る、率いる、知る、競る、練る、繁る、罵る、翻る、茂る、要る、覆る、見知る、見限る、詰る、謗る、譏る、走る、踏みにじる、蹴る、軋る、迸る、過ぎる(よぎる)、遮る、阿る、限る、陥る、陰る、齧る、滾る…

 ここに列挙しただけで100個近くの例外が見つかりました。(私調べ)
 そこで、更にここから絞り込む方法を試してみます。

 

漢字と送り仮名の字数で判別する

ただし、漢字表記にしたときに「漢字1文字+送り仮名1文字」のものは五段活用。「漢字1文字+送り仮名2文字」のものは一段活用。
(複合動詞の場合は後ろの動詞を参照する。)

 漢字が分かれば、その漢字と送り仮名の字数の関係でもグループ分けすることができます。
 上記の例外から更に絞り込みをしてみましょう。

うねる、しくじる、ちびる、のめる、愚痴る、捻じる、攀じる、曲がりくねる、火照る、踏みにじる、上がる、交じる、怖じる、混じる、率いる、過ぎる(よぎる)

 今度は「~きる」「~かえる」などの多くの動詞が五段動詞として正しく判別されましたが、漢字に変換できなかった一部の動詞、そして数少ない例外がまだ残っています。
 特に「上がる、交じる、怖じる、混じる、率いる、過ぎる(よぎる)」は、この判別方法に照らし合わせてみると一段動詞だ!と言いたくなります。しかし五段動詞です。この数少ない例外たちのせいで、この判別方法は完璧ではなくなっているというわけですね。

 

まとめ

例外があるとはいえ精度は高い

 この検証をするにあたって2500個近くの動詞を集めました。
 動詞辞書形の最後の平仮名を見る判別方法では、2500個の内2375個が正しく判別され、精度は95%とかなり高めです。
 さらに漢字と送り仮名から見る判別方法を使えば、例外だった125個の動詞が16個に減りました。(99.3%)

 これらの例外は結局のところ覚えるしかないという結果ですが、日本語学習者は辞書形だけを見てグループ判別しているわけではありません。
 たとえば「上がらない」という言葉が耳に残っていたとすれば、この形から「上がる」は五段動詞だと判別できます。このように聞いたことのある、見たことのある活用形から逆算してグループ判別することもできます。

 以上です。