日本語コラム

 突然ですが、問題です。
 次の動詞の分類を(  )の中から選んでください。

 【問1】 愛する(あいする) ( 五段活用 / 一段活用 / サ変活用 )
 【問2】 値する(あたいする) ( 五段活用 / 一段活用 / サ変活用 )
 【問3】 揺する(ゆする) ( 五段活用 / 一段活用 / サ変活用 )

 どうでしょうか。
 もし正確に答えられたとしたら、この3つの動詞たちの奇妙さに気づかれたのではないかと思います。

 私は今、この「~する」の動詞たちにとても腹が立っています。

 「愛する」は五段活用、「値する」はサ変活用、「揺する」は五段活用です。
 一つずつ見ていきます。

 私が動詞の分類を簡易的に見極めるときは、動ない形で判断していますのでその方法を使って説明します。

 「愛る」の動ない形は「愛ない」。
 「す」が「さ」になっているのでサ行五段活用だと分かります。これは「話す」「治す」などと同じ使い方です。

 「値する」の動ない形は「値しない」。
 これは「する」がそのまま「しない」と変化しているので、サ変活用だと分かります。
 五段活用なら「値さない」になりますが、この言い方は不適切です。

 「揺す」の動ない形は「揺すない」です。
 「る」が「ら」になっているのでラ行五段活用です。

 
 全て「~する」で終わる動詞なのにも関わらず、分類が異なっています。
 しかも「愛する」に限って言えば、語尾の「る」が活用時完全無視。

 教えるなら「愛す」という言い方のほうが文法に沿ってて良いと思います。
 これは「訳する」と「訳す」、「徹する」と「徹す」などにも同様のことが言えます。
 しかし「愛するべき人」よりも「愛すべき人」のほうがより多く使われていますし、「愛する人」もごく一般的な言い方ですから困ったもんです。

 これでは「愛する」は「愛さない」だから、「値する」は「値さない」だ!と勘違いする人もいるかもしれませんし、またその逆のパターンも十分ありえます。

 「揺する」のような動詞も極悪非道に見えてきませんか?
 あたかも私はサ変ですよと見せ掛けておいて、実はラ行五段活用。
 こうやって学習者の混乱を招いていくのでした…。

 
 
 私は中国語の動詞を勉強するとき、①発音、②意味、③漢字の書き方によく注意します。人によっては、④例文、⑤派生した用法にまで及ぶでしょう。

 でも日本語学習者が日本語の動詞を勉強するとき、上で挙げた5つのポイントは同じですが、これに加えて動詞の分類にも注意しなければいけません。
 (一段動詞、五段動詞、カ変、サ変、自動詞、他動詞 …)
 なぜなら動詞の分類によって文法が細かく変わるので、正しく使うためには絶対必要なことなんです。 

 日本人ならなんでもないことですが、これを教えるとなると相当の労力が要ります。
 日本語のこういうところ、美しくないといわれても仕方ありませんね…。

日本語コラム

 twitterで「問題なこと」と調べてみたら、いくつものヒットがありました。
 私も何気なく使っていた言葉ですけど、文法的に見ると間違った使い方なんですね。

 日本語に携わらない人なら何のことかとっさに分からないかもしれませんが、学習者は実に鋭く見抜きます。
 日本語教師にとっては恐ろしいことです…。

 「問題」とは本来名詞。
 手元の電子辞書で調べてみても、どこの辞書を見ても名詞と書かれています。

 しかし接続に「な」が使われているところを見ると、ここでは「問題」が形容動詞(な形容詞)として扱われているんです。

 いったいどういうことでしょう…。
 
 答えは単純で、やっぱり言葉の変化です。
 「全然」なんかも同様に、本来とは違う用法で使われることが多くなりました。

 「問題なこと
 じゃあ、これを正しく言うなら?

 教科書で扱われている標準的な文法に則って説明すると…

 名詞と名詞を接続するときは「の」を使います。また、動詞普通形と名詞もそのまま接続できます。
 したがってこの場合の正しい言い方は、「問題のこと」「問題があること」です。

 今教科書で扱われているごく標準的な文法や単語と会話とでは大きな差があり、それを反映し切れていません。

 試験を目標とするのならいいかもしれません。
 しかしより実践的な日本語を学びたいなら、中級あたりで色んな疑問を抱くことになると思います。

 もちろん、初級の時点でこんな細かい変化ばかり触れていくと学習に悪影響があるので省いているんですけど、そのわりにはいつ使うんだという単語も載せていたりしてるんです。

 美しくないと思いませんか?

 教科書で学ぶ文法が必ずしも絶対じゃないよということを、教師は分かっていなければいけないと思います。

日本語コラム

五段動詞

 五段動詞の使役形は「ない形+せる」で作ります。

 辞書形 → ない形 → 使役形
 書く → 書か(ない) → 書かせる
 泣く → 泣か(ない) → 泣かせる
 守る → 守ら(ない) → 守らせる
 死ぬ → 死な(ない) → 死なせる
 

一段動詞

 一段動詞の使役形は「ない形+させる」で作ります。

 辞書形 → ない形 → 使役形
 食べる → 食べ(ない) → 食べさせる
 決める → 決め(ない) → 決めさせる
 見る → 見(ない) → 見させる
  

カ変動詞

 カ変動詞の使役形は「来させる」です。

 辞書形 → ない形 → 受身形
 来る → 来(ない) → 来させる

 ※「くさせる」と誤読する場合があるので注意。
 

サ変動詞

 サ変動詞の使役形は「させる」です。

 辞書形 → 受身形
 する → させる
 行動する → 行動させる