日本語コラム

 学生はアメリカ人の先生を親しみを込めて名前で呼びます。名前がJohnならストレートにJohnと呼ぶわけです。しかし日本人の先生に対して苗字や名前で呼んだら大変失礼です。さんや君などの敬称をつけずに呼ぶことを呼び捨てと言って、これは通常目上から目下に使われる呼び方です。

 毎年新1年生には1人2人くらいそういう人がいます。
 悪意はなく親しみを込めて呼んでくれているのは十分分かりますので特に気分を害することはありませんが、万が一別の先生が聞いていた場合は説教が始まってもおかしくありませんね。

 そしてつい先日、そういう一幕がありました。

1年生 : たかはし~ こんばんは!
わたし : おっ、こんばんは!
3年生 : すごく失礼ですよ!
1年生 : (´・ω・`)…?
3年生 : 先生をそうやって呼ぶのは失礼だから、「先生」と呼びなさい!
1年生 : (人ω<`;)

 3年生と一緒に散歩してた時に偶然その1年生に会い、間髪入れずに叱ってくれました。本当に先輩の鑑です。
 1年生はまだとっさに「ごめんなさい」「すいません」が言えなかったせいで笑ってごまかす感じになりました。あのままずっと居れば気まずくなっていただろうと思いますが、私たちは散歩中でしたのでそそくさと立ち去り、その1年生にとっては良い経験になったかなと思います。

 私はこういうことにあまり注意しません。日本語教師としてダメですかね…
 わざとでなければ悪意もないですし、注意しなくてもいずれ自分の間違いに気付く時があります。私が注意するよりも他人から注意されたほうが強い印象になります。
 今回ばかりは3年生に拍手ですね!

日本語コラム

 ある本にこんな問題がありました。

20.君(   )信頼できる人はいない。
 [A] ほど
 [B] より
 [C] だけ
 [D] さえ

 私の第一感はBの「より」だったんですが、参考書によると答えはAの「ほど」だそうです。確かにAでもいいんですが、Bでもよくないですか…?
 というわけで比較を表す「より」と「ほど」の違いについて調べてみました。

 

助詞「より」について

 比較と起点の用法がありますが、ここでは比較の用法についてのみ述べます。

「より」の文型は2つある

 「より」が用いられる文型は「AはBより~だ」と「BよりAのほうが~だ」の2つあります。「より」は比較の基準を示し、「ほう」は比較対象を強調します。直接的に比較をする際に用います。
 
  (1) 彼より頭が良い。 (彼>私)
  (2) 私より彼の方が頭がいい。 (私<彼)
  (3) 飛行機新幹線より速い。 (飛行機>新幹線)
  (4) 新幹線より飛行機の方が速い。 (新幹線<飛行機)
  (5) 電話メッセージより伝わりやすい。 (電話>メッセージ)
  (6) メッセージより電話の方が伝わりやすい。 (メッセージ<電話)

 

「より」の後ろには必ず肯定形が来るらしい?

 参考書に書いていたのですが、「より」を使うときは後ろに否定形が来ないと書いていました。このルールに従うと、以下の例文は非文になってしまいます。

  (7) この店はあの店より安くない。 (この店>あの店)
  (8) あの店よりこの店のほうが美味しくない。 (あの店>この店)

 しかしこれは間違いではないはずです。「より」と否定形が呼応するケースは日常会話の中でも多くあり、「~よりほかない」「~よりしかたがない」などの文法でも用いられています。私としてはこの説に懐疑的です。

 

助詞「ほど」について

「ほど」の後ろには必ず否定形が来る

 「ほど」で表された比較の程度は「より」よりも小さく、わずかに差がある時によく用いられます。「ほど」の後ろには必ず否定形が来て、肯定形は来ません。間接的に比較する際に用います。

  (9) 私は彼ほど頭が良くない。 (私<彼)
  (10) 新幹線は飛行機ほど速くない。 (新幹線<飛行機)
  (11) メッセージは電話ほど伝わりやすくない。 (メッセージ<電話)
  (12)✕野球はサッカーほど疲れる。

 

 

「より」と「ほど」の違い

「ほど」は否定形、「より」はどちらでもいい

 両者の違いを見たときに明らかに違う点は、「ほど」は絶対に「~ほど~ない」の形をとることです。後項に肯定形を使うと非文になります。
 一方「より」は参考書によると必ず後ろは肯定形だそうですが、会話においても文法においても否定形と呼応するケースが多く見られます。ここでは肯定形でも否定形でも非文にならないものとして結論付けます。

 要するに、否定文を使って間接的に比較をしたいのなら「ほど」を使い、「より」はどんな場合にでも使うことができます。

 

「最も良いものを選びなさい」ってずるい

 最初の問題に戻ります。

20.君(   )信頼できる人はいない。
 [A] ほど
 [B] より
 [C] だけ
 [D] さえ

 普通試験では問題を出す前に「選択肢の中から最も良いものを選びなさい」と言われます。最も良いものとは、仮に答えが2つあったとしても最も適当だと思われる選択肢を選びなさいと言っているわけで、今回はそれが問われているんだと思います。

 私がBの「より」でもいいと思ってしまったのは、「より~ない」の形を正しい日本語として認識していたからではありますが、文末に否定形がある以上、「より」よりも「ほど」を選択するべきだという出題者の意図があるかもしれません。

 こういう問題が出てくると、仮に日本人だろうと満点取れなくなってしまいますよね。

 

まとめ

 「より」の後ろは肯定形でも否定形でも構わない。
 「ほど」の後ろは必ず否定形が来る。

 正しいと思われる選択肢が2つ以上あったとしても安直に選ばずに、文法から見てどれが最も適当かをちゃんと見極めましょう。

日本語コラム

 「頭が赤い魚を食べた猫」が少し話題になっているみたいです。
 短い文ではありますが、形容詞「赤い」と名詞修飾節の「魚を食べる」がそれぞれ何を修飾しているかによって5つの異なる解釈ができてしまいます。面白さもありますがややこしいですよね…。

 

「頭が赤い魚を食べた猫」について

日本語は文節を並べ替えられる

 文節とは文を句切りながら発音して、実際の言語としてはそれ以上に句切ることはない個々の部分、文を実際の言語として不自然でない程度に区切った最小の単位のことです。私は小学校のときに「ね」を加えて区切ることができるのが文節だと学びました。

① 私たちは/調理実習で/カレーを/作りました。
② 私たちは/カレーを/調理実習で/作りました。
③ 調理実習で/私たちは/カレーを/作りました。
④ 調理実習で/カレーを/私たちは/作りました。
⑤ カレーを/私たちは/調理実習で/作りました。
⑥ カレーを/調理実習で/私たちは/作りました。

 文末は固定してそれ以外の文節は大体入れ替えることができます。どちらかというと文節ではなく助詞の後で区切って入れ替えるというほうが正しいかもしれません。ただし格助詞「から」「まで」「の」などは文節の順番に制約を与えます。

 

修飾節と被修飾名詞は遠くてもいい

①【頭が赤い魚】を食べた猫
②【頭が赤い】魚を食べた【猫】

 ①は修飾節「頭が赤い」と被修飾名詞の「魚」は連続して接続されていますが、②は修飾節「頭が赤い」と被修飾名詞「猫」の間に別の言葉が入っています。
 文節区切りで順番を入れ替えられる性質上、修飾節と被修飾節は離れていても問題ありません。もともと同じ文でもどこで区切って何に修飾させるかにより異なる解釈が可能になります。ただしあまりに距離が離れているとダメなときもあります。

 

「頭が赤い魚を食べた猫」の5通りの解釈

 文節の順番を入れ替えられる性質、そしてお互いに離れていても修飾節と被修飾節は結び付く性質が「頭が赤い魚を食べた猫」に全部で5つの解釈を与えています。一つずつ見ていきましょう。

①猫は、頭が赤い魚を食べた

 修飾節が「頭が赤い魚を食べた」で被修飾節が「猫」なら、「猫は、頭が赤い魚を食べた」と言い換えることができます。

 

②猫の頭は、赤い魚を食べた

 助詞「が」は名詞修飾節内の主語につくという性質があります。ですから修飾節が「頭が赤い魚を食べた」なら、この助詞「が」はもともと「は」に入れ替えることができるということです。すると「頭は赤い魚を食べた」になります。残ったのは被修飾節の「猫」で、これが名詞修飾節内の主語「頭」と繋がります。
 なので「猫の頭は、赤い魚を食べた」と言い換えることができます。

 

③頭が赤い猫は、魚を食べた

 修飾節が「頭が赤い」と「魚を食べた」の2種類が同時に「猫」を修飾すると、「頭が赤い猫は、魚を食べた」と言い換えることができます。

 

④頭は、赤い魚を食べた猫(の人)

 この時の助詞「が」が「雲人の顔の形みたい」の「が」と同じ用法だとした時に、顔は猫で、体は人というキメラを想像できます。この時「頭は、赤い魚を食べた猫(の人)」と言い換えることができます。頭は猫で、体は人のものです。

 

⑤頭は赤くて、魚を食べた猫(の人)

 この時の助詞「が」が「雲人の顔の形みたい」の「が」と同じ用法だとした時に、形容詞「赤い」が「頭」を修飾すると、「頭は赤くて、魚を食べた猫(の人)」と言い換えることができます。頭は猫で、体は人のものです。

 

まとめ

 日本語は文節で順番を入れ替えられるので、修飾節と被修飾節に距離があっても正しい日本語として認識できます。ただし、話者の意図したことを正しく理解できるかどうかは文脈次第、場合によっては運次第です。
 通常このように複数の解釈ができる文や紛らわしい文には読点を打って意味を限定しますので、意思疎通できなくなるほど分からなくなることはまずありません。万が一伝わらなければ言い換えればいいだけの話です。

 自分で書いていて意味分かんなくなってしまいました。結局紙に書いて整理したんですがそれでも混乱しています。

 今回はちょっと話題の面白い日本語を見てみました。
 何か問題・間違いありましたらコメントください。